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『プラトン入門』 竹田青嗣

 プラトンという人は、どうも誤解されているらしい。
 ワタクシも、この本を読むまでは、プラトンが苦手だった。
 真理だとか、絶対だとか、
 そういう窮屈な、押し付けがましい言葉があるのは
 プラトンの せい  だと思っていた。

 たぶん世界史の教科書に載っていた数行の記述から
 そういうイメージを持ってしまったんだと思う。(洞窟の比喩とか)
 それ以前にプラトンという言葉を聞いたのは、
 野坂昭如の ♪ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか~♪ という歌ぐらいだったから。

 今は “真理”とか“絶対”などというのは、[コンセプト] だと思っている。
 つまり、そういう状態が[想定]されているのだ、と。
 だから、何もムキなって「絶対なんか絶対ない!」 などと言わなくてもいい。

 そもそも、苦手なプラトン本を何故読んだかというと、
 著者の書いたほかの本(『自分を知るための哲学入門』)が
 面白かったからである。

 よくある哲学史的な解釈ではなく、
 哲学を 自分自身に引き寄せて 考えているところに クラッと きた。
 この人なら プラトンをどう描くだろう、という興味があったのだ。

 クラシック音楽の愛好家は、
 同じ曲のCDを何種類も持っている。
 曲が同じでも、指揮者、楽団、演奏された時代によって
 無限のヴァリエーションがあるから。

 それは “入門書” の面白さにも似ている。
 原典をどのように解釈するかによって、
 無限のヴァリエーションが生まれる。

 著者の解釈では、
 プラトンは、絶対的真理を押し付けようとしたのではなく、
 むしろ、共通理解を作り出せるような説明を考えた、
 ということだった。
 “普遍”と“絶対”を混同するから、誤解する、と。

 なるほど、そうだとすると、
 プラトンのイメージが変わる。
 考えてみれば、権威は最初から権威だったはずもない。

 苦闘の末に編み出した、
 プラトンにとってのスピニングトーホールド(必殺技)、
 それが“イデア”だったのかもしれない。

 この本を読んだあと、
 ワタクシは やたらと 「イデア、イデア」言うようになった。
 正直、イデアの意味を理解したとは言い難いが、
 まぁ、ちょっとだけ、プラトンを尊敬するようになった。


 ちくま新書 『プラトン入門』 竹田青嗣 筑摩書房
  1999年 3月20日 第1刷発行

                        

                                        ナンシー関 が消しゴム版画で描いたプラトン
                     『90分でわかるプラトン』 ポール・ストラザーン(著) 浅見昇吾(訳) 青山出版社
                     1997年 1月25日 第1刷発行 表紙より

 ここからは、つけたし だが、

 岩波新書 『プラトンの哲学』 藤沢令夫 も、面白い。
 藤沢 氏は、ギリシャ哲学の専門家で、プラトンの著作を数多く訳されている。
 丁寧にプラトンの仕事を読み込んだ、いわば、正調のプラトン入門。
 随所に溢れる“プラトン愛”が、読んでいて楽しい。

  岩波新書 『プラトンの哲学』 藤沢令夫 岩波書店
   1998年 1月20日 第1刷発行
   2004年 5月14日 第4刷発行

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