私の思考パターンに近かったから好きになったのか
影響を受けて現在のような思考パターンになったのか さだかではないが、
中高生の時に読んだ江口寿史の漫画は衝撃的だった。
例えば 何かをしている時に、まったく別のことが思い浮かぶことは よくあるけれども、
江口の漫画では、それが、そのまま表現技法として使われている。
まるでプログレシヴ・ロックのように、ブツ切れの事柄を繋ぎあわせるのだ。
上のシーンを読んだ時には、
ワタクシ達のアタマは、筋道を立てて考えることなどできないのではないか。
あっちこっち寄り道しながら、飛び石の上を渡るように 進んで行くのではないか。
そんなことを考えさせられた。
外来語に漢字を当てる というのも、伝統的な日本文化の1つである。
アメリカ → 亜米利加 もそうだし、もちろん コーヒー → 珈琲 も 然り。
江口は、コーヒー → 珈琲 珈琲 → 漢字 漢字 → 一刀斎 という連想を働かせたのか、
珈琲一刀斎というキャラクターを考え出した。
さらには、一刀斎という響きから古の武術家然とした顔面を作り上げ、
そこに コーヒー → 洋風 → サングラス という連想をかさねて、
ウルトラマンキングのようなルックスを完成させている。
まるで 演歌のバックでエレキギターがギュイ~ンと哭くような、すばらしいハイブリッド感。
一見、異なる物事を強引に くっつけているようだが、そこには一種の連想ゲームが働いているのだ。
このようなことも、ワタクシ達のアタマがよくやることで、
上のような人物は、神経ネットワークの妙えなる働きが生み出した
非常に必然性の高い、説得力のあるキャラクターだといえよう。
同じようなパターンを繰り返して、しかも2回目は少しズラす。
その後 一呼吸置いて、クライマックスへ、という、
音楽的ともいえる展開が心地いい。
リーゼントを、宇宙戦艦ヤマトの艦首に例える と いう荒業。
ブッ飛んだ比喩でありながら、深い納得感が得られる。
ギャグ漫画の中に、突然 劇画調の絵柄が入るパターンは、
日常会話の中で、「~であります」 などと言うような おかしみに通じるものがある。
バイクメーカーと、当時そこから発売されていたスクーターから、
キャラクターの名前をつけている江口。
ちなみにワタクシは、その後 ホンダ タクトに乗った。
以上、江口漫画の中で 印象に残っているシーンをピック・アップしてみた。
改めて振り返ってみると、江口漫画のギャグは、
かなりの割合で、私の心の根底をなしていると言っていい。
「迷ったら江口寿史に返れ」
とりあえずは、そういうことだな。
ジャンプコミックス 『ストップ
!!ひばりくん
!』 ③ 江口寿史 集英社
1983年 6月15日 第1刷発行
1983年10月15日 第6刷発行
ジャンプコミックス 『ひのまる劇場』 ① 江口寿史 集英社
1981年10月15日 第1刷発行
1984年12月15日 第15刷発行
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